ギターのはなし

ギターの買い替え(グレードアップ)の前に

1.買い替えの時期とポイント


(1) ホップ、ステップ、ジャンプ方式で

現在この章をお読みの方は、ほとんどがギターをお持ちの方と思いますので、「買い替え」に絞って話を進めましょう。多くの方は最初数万円~十万円の量産ギターでスタートなさっていることでしょう(恵まれていて最初から手工品という方もおいでかもしれませんが……)。

ともあれ皆様は「ホップ」の段階は終えているわけですが、ギターを持って1~2年、あるいは2~3年もすると、もう少し上のランクのギターが欲しくなるのは当然です。経済的に余裕があるか、腕前が上がったか、腕前が上がらないのは楽器のせいだと責任をギターに押し付けるか……は、別にして当然なのです。

そこで考えて頂きたいのは、ギターを弾くということは一生涯続けることができる楽しみですから、どうしても一気に「ジャンプ」したい方は別にして、一般的にはステップ、ジャンプと3段階のグレードアップを踏まえる事をお勧めします。まだギターのことをよく知らない段階でいきなり「ジャンプ」するより良い結果が期待できるに違いありません。

ホップ(スタート) → ステップ(1~3年後) → ジャンプ(5~10年後)
量産品 → 30~50万円の手工品 → 80万円以上の手工品輸入品
手工品 → 50~80万円の手工品 → 100万円以上の輸入品

上のような図式が考えられます。ここで「ジャンプ」は80万円以上としましたが、この「以上」というのは大変な幅があって最高価格(必ずしも最高品という意味ではありません)では500~800万円以上というギターもあるのです。この辺になると経済力が物を言いそうですが……。

(2) いつ「ステップ」あるいは「ジャンプ」するのか

上のような図式が考えられます。ここで「ジャンプ」は80万円以上としましたが、この「以上」というのは大変な幅があって最高価格(必ずしも最高品という意味ではありません)では500~800万円以上というギターもあるのです。この辺になると経済力が物を言いそうですが……。

2.耳を鍛えましょう

判らない内は買うな、が原則です。でも、ずっと判らないままではいくら何でも淋しいですね。腕前だってまるで上がっていないに違いありません。腕が上がってくれば当然現在使用中のギターには飽きたらなくなるものですが、さて、その次の段階のギターを選別するという難しい問題が生じました。自分のギターには飽き足らないが、かと言って上のクラスのギターを自分で判断できるだろうか、という状態です。

ギターの良否が判らないうちは買い替えを控えた方が良いのですから、ここで自分の耳を鍛える必要が出てきた訳です。友人のギターが良いギターだと判りますか。先生のギターはもっと上のギターだと判りますか。これは第一段階に過ぎないのです。何故なら、自分のギターよりずっと高額のギターなら大抵の場合、やはり良いというのは当然でしょう。

こんな段階で買い替えをしてしまって失敗なさる方は意外と多いのです。本当に大事な事は、あなたの買い替え予算(例えば50万円)の範囲内のギターでもいろいろあるのですから、同じ価格のギターの中でどのギターが良いのか、自分にあっているのはどのギターかを判断できなければ、意味がないでしょう。これこそ買い替えで一番大事なことなのです。

そこで、耳を鍛えましょう。弾き易さや外観の美しさは誰でも判ることですが、音という全く捉えところのないものを、基準の中心に据えなくてはならないのですから、何としても耳を鍛えなければなりません。

3.耳の鍛え方、どうすれば耳は良くなるか

ギターの一番大切な、そして他の楽器とは比べ物にならない長所、それは音の美しさです。その音に対する感覚を育てない限り、ギターを持つ意味はガクンと小さくなってしまうのではないでしょうか。良い音とそうでない音をはっきり識別するのは、たやすいことではありません。長い経験と好みに対するはっきりとした意識を持つことが必要でしょう。

*数多くのギターを弾いてみましょう。

ご友人のギターでも「あっ、いい音だな」と感じたら弾かせてもらいましょう。この場合、あくまでご自身で弾いた音で判断してください。人が弾いているのを聴いているだけでは、音に対する感覚はほんのわずかしか向上しません。自分で弾いて初めてその音質がよくわかるようになるものなのです。なぜなら、皆様はずっと弾き続けているご自身のギターに対する音の評価は規準として持っているのですから、他のギターを同じ条件(すなわち、ご自身で弾くこと)で比較しなくては意味がないことになります。

人が弾いている時は良いと思ったけれど、実際にはそれ程ではなかった――ということは結構あることなのです。自分よりはるかに上手な人が弾けば、それ程たいしたギターではなくとも良い音が出るのは当然です。仮に皆様がその楽器の持つ能力を50%しか引き出せなかったとしても、音の優劣を判断することに何ら支障はありませんので、ご安心ください。

*レコード(CD)の聴きくらべをしましょう。

人間の耳というのはかなりいい加減なところがあり、同じ音を聴き続けるとその音に慣れてしまいがちです。「あれっ、この音軽っぽくて嫌いだな……」なんて聴き始めたはずが、5分もしないうちに気にならなくなって音楽だけを聴いていたりするのです。でも、すぐに他のCDを聴いてみてください。前の音に慣れているはずの耳がちゃんと音色の違いを聴き分けてくれるはずです。同じ音にはすぐ鈍くなるのに、他の音には常に敏感、これが人間の耳です。


*聴きくらべた結果をただ何となく感じることから、言葉に表してみましょう。

実際のギターを弾き比べる時も全く同じなのですが、この「言葉でハッキリ音の特徴を表現する」ことは音の良し悪しを判断する時に、大変役に立ちます。

明るい、暗い、軽い、重い、伸び伸びしている、詰まり気味の、よく広がる、抜けが良い、分離が良い、重厚な、男性的な、女性的な、艶っぽい、色彩感がある、力強い、サラッとした、ねばり強い、透明感のある、線が太い、細い、ザラザラした、すっきりとした、滑らかな、気品のある――あらゆる形容詞を聴いた音に当てはめてみましょう。初めてのギターを弾いた途端、いくつかの形容詞が浮かぶようになったら、皆様の耳はかなり鍛えられてきたと言えましょう。

*ギター専門店のハシゴをしましょう。

ギター専門店をちょくちょく訪ねて、その都度数本のギターを弾かせてもらいましょう。冷やかしで構わないのです。出来たらハシゴしてください。店によっては、すぐ買いそうでないお客に何本も弾かれるのを嫌がる所もあるかも知れません。そんな時は「1年後には買いたいと思っているので」というようにお話して理解してもらいましょう。

※お店の試奏で注意して欲しいことは……

・ボタン、ファスナー等でギターを傷付けないようにしましょう。

・汗をかいたままの状態では弾かないでください。セラニックニス仕上げの高級品は湿気に弱く、すぐに白く変色してしまいます。

・左手親指を立てる癖がある方は、爪キズを付けないように特に注意しましょう。

・あくまで自分の耳を頼りにしてください。もしよく判らない時は、店の人の意見を聞くのは悪いことではありませんが、あくまで参考に留め、ご自身の耳で判断できる時期を待ちましょう。そう、きっとご自分で判断出来る時が来ます!